トキメキ夢文庫『ノートルダム・ド・パリ』の話をさせてくれ

 新星出版社より出版されている『トキメキ夢文庫』シリーズというものがある。

「12歳までに読んでおきたい新・世界の名作」とのことなのだが『ノートルダム・ド・パリ』、この枠だろうか。仮にこの枠だったとして、バナーで一番大きく扱っているのはなんなんだ。『赤毛のアン』とかでいいじゃない。なんでよりによって『ノートルダム・ド・パリ』を選んだ?

amazon商品ページより

名作だろうけどなんというか、12歳までに読んでおきたいだろうか。原作本、この本を読んだ後に岩波文庫版を読んだのだが、全て読むのに1年かかった。読んでいた時間だけを圧縮すれば2,3ヶ月くらいだと思うのだが、あまりにも長く根気がいる本だった。中盤ずっと建築の話をしている章とかあるのだ。とても12歳までに読んでおきたい本ではない。

抄訳だから「12歳までに読んでおきたい」とか言えるのだ。

『ノートル=ダム・ド・パリ』という作品はメディアミックスされると結構な確率…というか大抵物語が原作とは異なる。1939年公開の『ノートルダムのせむし男』の時点で原作とは異なるラストを迎えており(この映画はディズニーの『ノートルダムの鐘』にも影響を与えたのだろうな。と見て取れるシーンが少なくないので興味があったらぜひ)、1939年公開の映画ですでに改編される物語であった『ノートル=ダム・ド・パリ』の“原作”をザックリ知るためにはもってこいの1冊である。

というのも、子ども向けに抄訳されたノートルダムというものがそもそもないのだ。当時サラッと読めるノートルダムについて調べたものの本作しか見当たらず読んだのだが、後に岩波文庫版を読んだ上で思い返すと意外と原作の大まかなあらすじはフォローしているし、原作の陰々滅々とした雰囲気もちゃんとある。

帯には『愛におどらされる美女の運命は!?』と書いてあるのだが、原作よろしくちゃんと死ぬ

子ども向けに抄訳されているものの、グレンゴワールがメインキャラクターとして登場していたりフェビュスの婚約者が出てきたり、なんというかディズニーナイズされていないノートル=ダム・ド・パリがもはや今日では貴重な気さえしてくる。その結末はディズニーアニメーション映画を見て手に取った子供カがいたとしたら、げんなりさせるに十分な力を持っておりあなどれない。

ディズニーのアニメーション映画や劇団四季のミュージカルを見たことがあって原作を知らないひとにもこんな話だったんだ。と、絶対に思ってもらえる1冊なので意外とオススメなのだ。Kindleのセールで100円とかになっているのを見たことがあるのでそういうときにでも買ってみてほしい。

個人的にお気に入りなのは、この本が小学校高学年くらいの女の子向けレーベルというのもあり、本の中の装丁もなかなかファンシーのなのだが、そのファンシーの中で顔写真を使われているユゴー。他で見ることができないユゴーも見られるどうかしている1冊である。

先ほどサクッと読めるノートル=ダム・ド・パリがない。と書いたのだが、今年角川文庫より抄訳の『ノートル=ダム・ド・パリ』が発売されたらしいのでまた買って読みたいと思う。

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