こだまさん宇宙初ラジオ出演とオーディブルで聴く『夫のちんぽが入らない』が素晴らしかった

衝撃的な出会いだった。数年前、すでにインターネットで話題となっていた『夫のちんぽが入らない』、その痛々しくつらく切なくユーモアと愛情に溢れた文章を読んで以降、作者のこだまさんのファンだ。

おしまいの地シリーズ最新作『ずっと、おしまいの地』が発売され、作者のこだまさんがTBSラジオ『Session』に出演した。

Sessionは22時代からニュースを聴くならこの番組。と日常の中にあった番組だったので、こだまさんが初めてラジオ出演をする番組がSessionであることが嬉しく、パーソナリティのチキさんや南部さんとのやりとりも楽しみであった。

出演は前後編2週にわたり、特に前編で話していた「覆面授賞式」の裏で怒られがあった。という話には驚いた。チキさんと南部さんがすぐにこだまさんは間違っていない。とすぐに肯定したのも印象的で、この番組のこの2人のこういうところがとても好きだ。と改めて思った。

それにしてもこだまさんが覆面で授賞式に出たことを怒ったというひとは、こだまさんの文章の何を読んだのだろう。文章の中でも何度も語られている「誰にも言わない理由」をどう受け取ったのだろう。不思議で仕方がない。

チキさんも言っていたが、素性を明かさないから書けるものがあり、読者はそれを読める。

本当にそうだ。

後編では南部さんがオーディブルで『夫のちんぽが入らない』を聴き、「打ち明け話を聞いているようだった。そういった話を聞いたから自分も何かを打ち明け話をしたくなるようだった。」というようなことを言っていて、そうそう、こだまさんの文章は読んでどう思った。という話を言語化できない気持ちまで話したくなるよね。とイヤホンで3人の会話を聴きながら相槌を打つ。

それを聴いてAmazonオーディブルで『夫のちんぽが入らない』を聴いた。その物語に触れるのは文庫化されたときに再読して以来だろうか。とても好きな小説なのだけど情緒がぐちゃぐちゃになってしまうのであまり読み返したりはしなかった。

あのキュッとした気持ちになる読後感をいつでも思い返せたというのもある。

オーディブルのいいところは否応なく読み進められるところだと思う。物語がどれだけつらくとも、悲しくとも、一度読み止めたい。と思っても停止ボタンを押さない限り読み進められるところだと思う。

仕事をしながら聴いていたのだがあっという間に終わってしまった。過去に読んだ本とはいえ声で聴くとまた違ったし、くらってしまった。終盤は半泣きで仕事をしていた。

夫との関係も好きだが、ミユキとの関係もなんとも言えない味わいがある。宗教二世というものが世間の中で語られるようになり、思い出したのは本書のミユキ。結果的にミユキにとっての幸せというものが何だったのか。叶ったのか、諦めた先にあったものなのか。読者の1人でしかない自分にとってはわからない。それを決めるのは他者ではないのは確かであり、他者は当事者の幸福を願うことしかできない。

加藤美佐さんの音読がまたよかった。失礼かもしれないがこだまさんの文章の中のとぼけた部分、滑稽な部分の表現が個人的にツボだった。だからこそ地続きにある痛々しさや切実さが強調され情緒は。

オーディブルで“ちんぽ”を聴き終え、ceroの『Orphans』を聴いた。この曲はceroの高城さんが本書に着想を得てできた1曲であり、読んだ後に聴くともう作品のテーマソングそのもので浸かっていた余韻に溺れそうになってしまうくらいの名曲である。

“ちんぽ”の余韻に浸りながら今日も『ずっと、おしまいの地』を読む。

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