実写版『リトルマーメイド』の予告を見て期待することと不安なこと

実写版『リトルマーメイド』の予告を見て期待することと不安なこと

D23にて実写版リトルマーメイドの予告が公開された。

アリエルのキャストにハレ・ベイリーが起用される。という発表が2019年なのでコロナ禍の影響も少なからずあったと思うが3年越しに待ちに待った予告編である。

予告が公開されたらすぐに「アリエルのイメージではない」等々、要は人種差別的批判が多く辟易する。ハレ・ベイリーが起用されたと発表された2019年にも同様の反応があったがやはり映像が出るとこうも可視化されるのか。とクラクラするくらいには「差別じゃないんだけど」から始まる差別的なツイートを散見した。それに関してはつい先日書いた

シンデレラ以降定期的に作られているディズニーの過去のアニメーション作品の実写映画化のライン、個人的には割と好きで、アニメーション映画から数十年年近く経ってることで社会の変化にどうディズニーがアンサーを出すのか。を見るのが楽しみになっている。

アニメーション映画は『原作』ではない

実写映画が制作されると発表される度に「『原作』と違う」などと言われがちな実写映画ライン。おそらく『原作』を指しているのは『アニメーション映画』なのだと思うのだが、そのアニメーション映画には『原作』がある。『リトルマーメイド』でいうところのアンデルセン『人魚姫』である。

それにかなり独自の解釈を交えて出来上がるものがディズニーのアニメーション映画だ。

では『アニメーション映画』と『実写映画』の関係性に関して、個人的には同じ原作から抽出されたそれぞれ別の作品。もしくはアニメーション映画から時代を経てアップデートした映像作品が実写映画。という認識をしている。

なぜいま作る必要があるのか

それが自分がディズニーの実写映画ライン求めるものである。『美女と野獣』ではル・フゥにゲイ設定が上乗せされていたり、『アラジン』ではジャスミンが女性国王になる。といった細かい設定やあらすじの変更が見られる。そういったところはいま作られる理由になる。

『リトルマーメイド』は個人的に「最後の恋愛至上主義的プリンセス映画」であると思っている。

2010年代に入り、ラプンツェルやアナ、エルサ、モアナといったキャラクターが生まれてきた中で「ディズニーの恋愛至上主義的からの脱却」が語られてきたが、細かく見ていくと『美女と野獣』や『アラジン』ではすでに恋愛至上主義的なプリンセス映画からすでに歩み出している。自立した力強い女性キャラクターが90年代から産まれていた中で89年に公開された『リトルマーメイド』はディズニー・ルネサンスの幕開け的な作品であると同時に、色濃くそれ以前のディズニープリンセスの物語に引きづられている物語でもあった。

アニメーション映画を焼き直すだけでは意味がない。いま語るべき物語をどう語るか。それは多種多様な人種を起用するだけでは達成できない部分である。

最後の恋愛至上主義的プリンセス映画リトルマーメイド

リトルマーメイドはそもそも今見るとなかなかキツい物語である。

アリエルはエリック王子に対して「なんてハンサムなの」くらいの印象で話したこともない相手に対し「愛している」と言い、エリック王子はエリック王子で顔を見たことがない女性の「美しい声」しか見ていない。

よく知らない異性のために「声」を差し出し「足」を得るアリエルはとても肯定できない。15歳ならそれくらいの生きるか死ぬかレベルの価値観で恋愛するかもしれないが。

個人的にずっと気になっているのがアリエルもエリックも互いの内面に対してあまり気にしていない様子なのである。ここら辺劇団四季版のエリックは最後にアリエルの声ではなく内面を愛している。という描写があり、少し安堵したことを覚えている。しかしそれも全編通して2人の変化を描いていたらもっとよかったと思う。

そこら辺が実写版でどう変わるのか。注目している。

猟奇的なシェフ

主要キャラクター以外で印象に残っているキャラクターがシェフ。猟奇的な殺人鬼をギャグ的に扱ったキャラクターだが、料理人を(魚たちにとっての)殺人鬼的に描くのは料理人に対してリスペクトを感じられないというか失礼ではないか。と思っていたが劇団四季版ではずいぶんと様子の異なるキャラクターになっていた。

さすがに殺人鬼はどうかと思ったのかわからないが、ステレオタイプなオネエ的キャラクターになっていたのだ。それはそれで見るに耐えない。日本での初演が2013年であることを贔屓目に見ても今年演じられるのには相応しくないと思う。2022年でも上演され観客が笑っていたのはこんなものなのか。と思ってしまった。

このキャラクターがどう描かれるのも注目したい。トリトン王なんかも結構なモラハラ親父だが、本当大丈夫だろうか。

監督ロブ・マーシャル

正直怪しいと思っている。

パイレーツ生命の泉とメリポピリターンズの監督である。『イン・トゥ・ザ・ウッズ』に関しては存在を知らなかったのでなんとも言えないが。頼む。面白くあってくれ。

期待と不安でいっぱい

などなどと期待と不安でいっぱいである。しかし愛される映画になってほしい。

少なくとも差別的な言葉に対してはスタジオは今後も声を上げるべきだと思うし、一ファンとして差別は今後も否定していく。

音楽面ではアラン・メンケンに加えリン=マニュエル・ミランダの参加も決まっており、正直リン=マニュエル・ミランダの曲を聴ける時点でお釣りは返ってくる。なんにせよ楽しみだ。

2022-09-11|
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